最近、妙にオセロゲームにハマっているみくはです(^^;
さて今回は、満を持して登場のCLIP STUDIO PAINT EX for iPad(以下、クリスタ)のレビューをお届けします!
いやもうほんと、待ちに待ちを重ねて待っておりましたよセルシスさん……!
なにしろ、iPad Proが登場してからすでに約2年!
ぼくは、クリスタでのお絵かきをすっかり諦めてProcreate(プロクリエイト)を使っておりましたが、Procreateはよいアプリであるものの、びみょ〜に不便なところもあったんですね。
例えば、レイヤーの色を一時的に変更できなかったり、自由に出せるガイドがなかったりなど(遠近法ガイドはあります)。
外国産アプリなので日本人の使い方とは微妙に違うのか、iPadだからできないのかは定かではなかったのですが、とにもかくにも『痒いところは我慢する感じ』ではありました。
あとやっぱり使っている人が少ないので、メイキングとかマニュアルとかがネットに少なくて(^^;
まぁそれでも、Procreateは他お絵かきアプリと比べても群を抜いてよいアプリでしたけどね。
そう……よいアプリ“でした”。
先に結論をいってしまうと、ぼくは2年のブランクをものともせず、Procreateからクリスタにあっさり戻ってしまいました……!
Procreateの記事を雑誌寄稿までしたのに!(゚Д゚)
でもそれほどによんですね、クリスタ for iPadは。
なんといっても、PCで慣れ親しんでいたあの操作性とインターフェイスそのままにiPad Proで使えて、しかも、タッチ操作もほぼカンペキに対応しているのです……!!
「Apple PencilがMacで使えたらまさにこんな感じ」であろうことを、iPad Pro内で再現してしまっているのですよクリスタは!
ということで前置きが長くなりましたが、以下、その操作や設定方法をお話しするとともに、クリスタの魅力と、逆に現時点(2017年11月現在)での欠点もご紹介して、最後に総括させて頂きますm(_ _)m
まずはじめにやることは、キーボードショートカットのカスタマイズ
クリスタのインストール直後、ぼくは、Apple Pencilだけでクリスタを使っておりました。がしかし、すぐに思うに至ります。
「これだけボタンが多いと、やっぱりキーボードショートカットが欲しいなぁ……ってか、もしかして対応してたり?」
ということでBluetoothキーボードをiPad Proに接続してみると……
対応してるじゃないですか! キーボードショートカット!!!
まぢですか!?
これができるようになるだけで、クリスタの操作性が恐ろしいほど向上するんですけど!?
さらに……
「キーボードショートカットが使えるということは、ひょっとしてカスタマイズもできるのでは!?」
と思ったりして、PC版の操作そのままにメニューを開いてみると……
あるじゃないですか! カスタマイズメニュー!!!
これはやばひ、と思いました。
iPad ProがもうカンペキにノートPC化しています。それでいてちゃんとタッチ操作も使えるんです!
ということで、まず始めやったほうがいいキーボードショートカットのカスタマイズについての設定方法を動画でお見せ致しましょう。
つぎにやることは、ジェスチャーショートカットの設定
クリスタは、PCソフトをそのまんま移植したわけではありません。
それでは使いづらいし、iPad Proの持ち味であるタッチ操作ができませんからね。
例えば二本指をひねれば、ちゃんと画面回転してくれます。だから指でキャンバスを移動回転・拡大縮小するのも思いのまま。
Procreateに比べると多少『もったり』しているものの、十分に実用レベルであります。
これがWindowsベースのSurfaceだったりすると、PCソフトがそもそもタッチ操作に対応していないことから、『多少もったり』どころではないのですね。指でなぞっても遅延しまくったり、スローになったり、あげく反応しなくなったりして実用レベルとはいえません。
しかしクリスタ for iPadは、PCライクな操作と画面でありながら、タッチ操作を実用レベルにまで見事高めておりました。
そして驚いたのは、なんとジェスチャーショートカットまであること!
ジェスチャーショートカットとは、例えば二本指タップで『取り消し(アンドゥ)』ができたりします……! さらに三本指でタップすると『やり直し(リドゥ)』ができるんです!
このジェスチャーショートカットを最初に考案したのはどのアプリだったのかは定かではありませんが、ぼくが初めてお目にかかったのは、やはりProcreateでした。
まぁ現在、お絵かきアプリでは当たり前となりつつある機能ではありますが、iPad Proが出た当初は、画面回転もできないアプリがたくさんありましたからね。その中にあってProcreateは頭一つ抜きんでていたわけです。
クリスタは、その機能を、PCライクなインターフェイス(画面)に取り込んだわけで、これは非常にユニークだと思われます。
そしてこのジェスチャーショートカットは、もちろんカスタマイズが可能です。
カスタマイズ方法については動画にてご覧ください。
クリスタ for iPadの魅力1:キーボードとタップの併用
真っ先にやっておきたい設定も終えたところで、『ココがすごいよクリスタさん!』と題してそのすごさを語ってみたいと思います。
前述でも少し触れましたが、やはりなんといってもクリスタは、キーボード操作とタップ操作が併用できる点が素晴らしいと思います。
Procreateでも、キーボードによるショートカットはある程度できたんですが、クリスタほど幅広くは対応していませんでしたので。
『コマンドキー+オプションキー+ペンでなぞる』でブラシサイズが変更できたりとPC版ショートカットがそのままに使えて、『画面を指で長押しでスポイト起動』なんて、PCではできなかったショートカットジェスチャーも新たに加わりました。
さらには『E』や『B』などのキーをタイプするだけで、ブラシをチェンジすることも朝飯前なのですね。
とにかくPC版クリスタとまったく同じショートカットですから、覚え直す必要もありません!
ちなみにぼくは下掲写真のように、iPad Proの上にキーボードを配置するスタイルで描画いております。これで、作画により集中できるようになりました。
ジェスチャーショートカットまで加わったことにより、PC以上の操作性を実現しているといえましょう。
いやぁ……すごいねクリスタ。お絵かきする人の心理をとてもよく分かっています。
2017年11月現在は、iPad Proは12.9インチが最大サイズですが、もし今後、15インチとか16インチとかに大型化するならば、もはや、PCベースの液晶ペンタブレットはほんと必要なくなりますね。
液タブはiPad Pro以上に高価で、しかも描画にしか使えず場所も取りますから、クリスタとiPad Proのコンビは、コスパと省スペースもズバ抜けております(゚Д゚)
クリスタ for iPadの魅力2:機能と画面がPCとほぼ同じ
インターフェイスが秀逸
さらに度肝を抜かれたのが、そのインターフェイス(画面配置)であります。
なんと、PC版クリスタと瓜二つどころかまったく同じ……!
通常、iPadアプリはタッチ操作をすることから、PCソフトとは異なるインターフェイスを考えなければならないのが、これまでの常識でありました。
ですがクリスタは、この常識をあえて破ってきた!
一見「手抜きか!?」と思われたこのインターフェイスは、ぜんぜんまったく手抜きではなく、とても考えられた末にこうなったのだと思われる工夫が随所に見受けられるのでした。
アプリを学び直す必要がない
まず、PC版クリスタと同じインターフェイスであることにより、アプリを学び直す必要がありません。
PCでクリスタを使っていた人は、iPad Proにクリスタを入れたその瞬間から使うことが可能です。
もちろん同じなのは、インターフェイスだけでなく機能もほぼ同等となっています。
iPad Proは、いまや下手なPCよりよっぽど高性能ですから、相当に重い処理でも可能なはずなんですよね。だから機能制限する必要はもうなくなっていたのです。
フローパネルと固定パネルの両方が使える!
PC版クリスタと全く同じインターフェイスでありながら、実は大きな違いがあるのが各種パネルであります。
カラーパネルとかレイヤーパネルとかですね。
どういうことかというと、なんと、パネル開きっぱなしでキャンバスにペンを付けると、そのパネルが自動的に閉じるのです!
百聞は一見にしかずということで下掲動画ご覧ください。
ぼくはこれを『フローパネル』と呼んでいます。一時的に表示させるだけのパネルなのですね。
iPad Proは、現在は最大でも12.9インチの画面ですから、描画するにはいささか小さいのです。だから画面配置をよほど効率よくしないと、何度も拡大縮小することになり描画が面倒になります。
そこで重宝するのがこのフローパネルというわけです。つまりパネルが開きっぱなしでは邪魔なので、必要なときだけ開いて、設定し終わったらすぐ閉じるという考え方ですね。
画面の広いPCにはなかった発想で、もちろんPC版クリスタには実装されていません。なので、単にPCソフトを移植しただけでなく、iPad用にちゃんと設計されていることが垣間見えます。
ちなみに、このフローパネルはProcreateで採用されている方式で、Procreateが秀逸である理由の一つでもありました。
そしてクリスタのすごいところは、必要に応じてフローパネルではなく、パネルを開きっぱなしにもできること! これを便宜上『固定パネル』でも呼びましょう。
ちょっと分かりにくい操作なので、やっぱり動画でご確認ください。
ツールバー右上のちっちゃな三角ボタンを押すことで列が開閉できます。
例えば描画作業中に、頻繁に使うパネルも出てくることでしょう。レイヤーパネルとかですね。
そういう場合は、1列だけパネルを固定表示しておけばより便利になります。12.9インチのiPad Proなら、1列ぐらいは固定パネルとして表示しておいてもギリ大丈夫でしょう。2列ともなるとパネルが邪魔になりますが。
この固定パネル化は、Procreateにもない機能ですから非常によく考えられていると思います。
アプリというのは、優れた機能は真似されるのが常ですが、なかなか真似できないのがこのインターフェイスだとぼくは思うのですね。
なぜなら、インターフェイスをあとから変更してしまうと、従来からのユーザーが操作を覚え直す必要が発生し、クレームの雨あられとなるからです。
なのでこのインターフェイスだけは、初期設計の段階で入念すぎるほどに考えねばならないわけですが、クリスタは、一見するとPCと同じですが、細かいところで気を使ってくれている印象です。
人気のお絵かきアプリをよく研究し、しかもPCライクなインターフェイスに見事落とし込んでいるといえます。
PCライクでありながらタッチ操作に対応している!
そうしてPCライクなインターフェイスでありながら、タッチ操作にはしっかりと対応しています!
画面最上段のメニューバーもPCのままですし、アラートの小窓までPCのまんまです。だからメニューバーの項目をタップするにはいささか小さいように感じますが……タップで使っているのはよく考えたら指ではなくApple Pencilだったのですね。
ペン先が細いApple Pencilなら、小さなメニューバーでも正確にタップできるのでした。そのほかいろんなボタンが小さめなわけですが、Apple Pencilなら余裕です。
そしてキーボードとそのショートカットにも対応しているから、ツールボタンなどがたくさんあってもへっちゃらというわけです。
よくよく考えてみれば、Apple Pencilがマウスが代わりなわけで、iPad Pro内でPCのような操作してもぜんぜん大丈夫だったわけです。そもそも液タブがそのような操作性ですし。
でもぼくは「PCと同じインターフェイスでも支障なし」とは気づきませんでしたねー。「iPadアプリはPCソフトと全く別物。だからiPad用に作るべき」というiPad原理主義者でありましたので(^^;
クリスタ for iPadの欠点は2つ
というわけで大絶賛のクリスタですが、欠点がないわけではありません。
ここ数日使ってみた欠点としては以下の2つだと思います。
- 移動回転・拡大縮小の反応速度
- パームリジェクション
前述でも少し触れましたが、二本指をひねっての画面回転は、多少『もったり』しています。実用には十分耐えるレベルではありますが、この辺、PCからの移植の限界でしょうか? Procreateと比べるとやはり遅いですね。
画面の移動や、拡大縮小も同様です。
もう一つの欠点はパームリジェクション。手のひらをついても誤作動しない機能のことです。
もしかするとパームリジェクション設定機能がついているのかもですが、今のところぼくはそれを見つけられておりませんで、そうすると、手のひらをついていたら不意にキャンバスがズレてしまったり、手のひらの置き方によっては細かな点が描画されてしまったりします。
なのでぼくはとりあえず、修飾キー設定機能で『一本指操作』をオフにしまして、これで誤描写はなくなりました。詳しくは上掲動画にて。ただ手のひらでキャンバスがズレてしまう現象は、一本指操作をオフにしてもたまに起こりますね。
でもまぁ使用に耐えないほどではありませんし、今後のバージョンアップで改善されていくことを期待したいところです!
サブスクリプション課金の是非
あと、うちの読者さんからのメッセや、App Storeのレビューには、サブスクリプション課金への不満も上がっています。
サブスクリプション課金とは月払い制ということですね。まぁ本来の意味は『予約購読』や『予約金』だそうですが。
つまりダウンロードするときに1回だけお金を払えばいい買取り制ではなく、アプリを使い続ける限り毎月利用料を払うのがサブスクリプション課金です。
クリスタ for iPadをフル機能で使用するには月額980円かかります。(ちなみに2017年12月20日までに申し込めば6カ月無料とのことです)
このサブスクリプション課金は、一見すると、アプリ開発者にとってはオイシイ制度とも見えますが実はそうでもないんです。
なぜなら、どんなに安価でも、月払い制にしたとたんに購入率が激減しますので。
ユーザーからしても、何十個ものアプリでサブスクリプションされては、毎月何千円、ときには1万円……2万円……と支払わねばなりません。ただでさえ通信費がバカになりませんから、そこにアプリ利用料まで毎月乗ってはたまらないわけです。
だからアプリ開発者が下手にサブスクリプション課金すると逆に真っ赤っかになってしまうわけですね。
しかしアプリ開発には継続的なお金がかかります。なのにダウンロード購入は一定以上になると頭打ちです。人間の数は無限ではありませんし、ニッポンは人口減が激しいですからねぇ(-_-)
さらにはiPadやiPhoneの高性能化に伴い、一昔前の気楽なアプリ開発はとうに終演し、その開発費もいまや高騰の一途なのです。
なので良心価格の買取り制でやりくりしていたアプリが継続開発不能に追い込まれ、最新版iOSに対応できずアプリが使えなくなる……という現象も起こってくるようになりました。とくにiOS11では古いアプリとの互換を切り捨ててしまいましたから、どんなによいアプリでも継続開発できないことには使えなくなるわけです。
ぼく個人としては、そもそものアプリ購入の金額は安すぎると思っています。
良心価格にするのはいいですが、それで開発が止まってしまっては元も子もありません。
上記の通りアプリには、古いアプリ切り捨てという『賞味期限』がありますから、常に開発し続ける宿命なのです。
だからある程度の金額を支払ってもいいから、本当によいアプリは安定した開発をし続けて欲しいと思うのです。
そのためのサブスクリプション課金は歓迎するというのがぼくの考えなのですね。
ですがこれには大前提があります。
繰り返しですが『本当によりアプリであれば』です。
どこぞのグラフィック会社のように、バージョンアップするごとにゴテゴテと余計な機能を付けて動作を重くし、基本機能は疎かにして、しかもサポート体制は稚拙極まりない状態でサブスクリプション化して、あげく顧客情報を流出するようでは目も当てられません。
クラウド対応したとたんにクレジットカードまで流出しておいて「データは暗号化してるから大丈夫」て、どんないいわけだ!?
でもPC環境においては、フォトをショップするソフトとか、HTMLを夢のように編み込みするソフトとか、いまや独占状態ですからねぇ……仕事している身としては、嫌々でも使わざるを得ないのです。
本来、DWとか素晴らしいソフトだったのですが……開発元会社が買収されたあげくダメダメにされました(ToT)
しかしながら、ダメなソフトやアプリなのに独占だからとサブスクリプション化するのは、いずれ手痛い目に遭うと思います。そして、コンピュータ環境がモバイルOS中心になるそのタイミングこそ、独占体制を崩せる好機だと思うのですが……誰か、Ad○beの牙城を崩すべく頑張ってくれないかな? セルシスさんいかがでしょ?
閑話休題(^^;
つまり何がいいたいのかというと、サブスクリプション課金は、それに見合うだけの優れたアプリでないと成立しないということですね。
だから、ソフトウエア会社の自信の表れでもありましょう。
あと、クリスタのような重厚長大なアプリと、例えば歩数計とかライトなアプリを同列で考えるのも「ちょっと違うかな」と思いますし。
クリスタ for iPadは、月額980円では安すぎるくらい素晴らしいアプリだと思います。
ただまぁ……趣味で月1回使う程度などだともったいないのは確かですから、これを契機に毎日頑張って練習します(><)b
移植アプリのお手本になる設計
いずれにしても、クリスタ for iPadは、久しぶりに度肝を抜かれたアプリでありました。
待った甲斐があったという出来映えですね(^^)
前述の愚痴(^^;で少し触れましたが、Appleさんに限らず今後のPCメーカーは、ノートPCよりタブレットに力を入れていくのだろうと思われます。
そしてビジネスユースや学業に始まって、お絵かき・画像加工・ちょっとした動画編集までタブレットでこなせるようになるでしょう。っていうかiPad Proはスペック的にはもう十分なのに、マウスが使えなかったりファイル管理や日本語入力がイマイチだったりで使用に耐えないわけですが……
いずれにしても遠からず、タブレットがノートPCに取って代わるわけです。ちなみにそれ以上の重作業……例えばアプリ開発に始まって拡張現実や仮想現実の開発など、つまり『開発』と名がつくタスクに関していえば、iMacとかMac Proとか、旧来からのPCが使われるようなイメージをぼくは持っています。
つまり大多数のユーザーが、ペラい板状端末を使うことになるであろうと。もちろんモバイルシーンではスマホですね。
まぁ2017年現在は、ぼくはまだバリバリにMacBook Proを使っておりますし、来年にはそろそろMacを買い換えたいところですが、その際はMacBook(無印)を狙っていますが(^^;、そこから2〜3年したら、MacBookシリーズは不要になるかもしれませんね──というかAppleさんがiPadでマウスを解禁してくれさえすれば、明日からでもiPadがMacBookの代わりになるんだけどなぁ……
そのような激変するコンピュータ環境において、PCソフトをiOSに移植することは火急の課題だと思われます。
「ならばWindows搭載のSurfaceでいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、そのSurfaceにしたって、アプリをタッチ操作に対応させないことには使い物にならないのです。
そういった『タッチ操作に移植する課題』を、クリスタは見事解決しているとぼくは思いました。
しかも、繰り返しですがインターフェイスはPCソフトと同じですから、ユーザーへの習得負担も最小限になるし、PCとのファイル互換もできて嬉しいのですね。
よってクリスタは、お絵かきユーズだけではなく、開発者にとってもお手本になるすごいアプリであると感じたのでした(^^)
カテゴリー:iPadの使い方